包容力と愛をそなえた女性的な力を作品に込められるよう努めました。細胞分裂を経て胎児が育っていくプロセス、DNAの螺旋構造、子宮、女性器を抽象したデザインがちりばめられています。
女性的なエネルギーへの感受力を高め、古代エジプトにおける生命の象徴であるアンクと桃が随所に挿入され、瑞々しさのエネルギーを発して欲しいと願いました。
五芒星の代表的な効果は魔除けです。
邪悪なものから身を守る力を得るためにこの形は用いられ、命を宿し、育んでいく母体と胎児を守護する意味を込めています。陰陽師・安倍晴明が積極的に使用した形がこの五芒星であり、京都の晴明神社のシンボルでもあります。
視点を変え、次に浮かび上がってくるのは、数多のエジプトのシンボルです。
スフィンクスとギザのピラミッドの幾何学的な配置、ファラオの顔、ピラミッドの黄金比、そして、私が尊敬してやまない知恵と月の神・トートが大きく翼を広げた姿なども描かれています。
そして又、神官達の祈り。
陽と陰の祈りのポーズから世界を創造する力を放出していく様。大局的には人生のバイオリズムを俯瞰する目線を作品に込めました。人の一生は平坦な道ばかりではなく、上り下りがあって当たり前。光と影の時期を行き来し、陽と陰の経験と感情を自分自身で味わうことで、魂の次元が変化していきます。
ゴールドとブルーの色はツタンカーメンの黄金のマスクを彷彿とさせます。
ブルーの塗料には独自に粉砕・粒状にしたラピスラズリを、ゴールドの塗料には高級鉱物リビアングラスを贅沢に混合させ、原画の額装にも二種の鉱物を散りばめています。
画像:pixabay
さて、なぜこの作品を描こうと思ったのか。少しだけ書きたいと思います。
昨年はゴング演奏で日本各地へ赴き、多忙を極めました。あれほど忙しいスケジュールはかつて経験したことがなかった程でした。
「忙(しい)」という漢字は「心」を「亡(くす)」と書きます。
文字通り、私はあまりにも急激な人生の変化と立て続けに出現する現実の中で、いつしか心を無くした状態になっていた気がします。
冬の間、じっくり内観し、今、自分のエネルギーはどういう状態かを理解することに努めました。
私のことを本当に想ってくださる方々から、そっと言葉が寄せられ、自分の至らなさを振り返るとともに、回復に向けて歩む意志を固めました。
女性的な力と敬意を込めた作品を描くことが、自分を癒し、変えていくことだと直感し、制作をはじめました。
制作過程では、峻烈で鋭利な男性的エネルギーと無限を包蔵する女性的エネルギーが静と動で交差して行き来し、多様な感情を味わいながらも、女性的エネルギー優位で進んでいきました。
そして、総制作期間は約2ヶ月半、200時間以上を要しましたが、納得が行く水準で完成させることができました。制作最終日は夜8時から朝8時まで描き続けました。
草木も眠る丑満時。最後の最後で絵の力を飛躍的に向上させるモチーフが突如思い浮かび、無我夢中で時間を忘れて具現化させました。
太陽が昇り、室内に光が入り始め、小鳥のさえずりが気持ちよく聞こえてくる時間帯に平穏な気持ちでペンを置くことができました。
その時の神秘的な体験が作品に光を届けてくれた感覚があり、見る度に私自身の心身魂に栄養を供給してくれます。
本作品はこれまでと同様に見る人の精神状態によって、多様に解釈ができるデザインになっているかと思います。人によっては謎解き、人によっては意識進化、人によっては自己対話など多様な展開があるはずです。
どうぞ作品をお愉しみください。
アーティスト Sho Miztani
◉オンラインショップでアートプリント販売開始!
Art Print ① 月の宮殿(Moon Palace)B3変形サイズ