

【長野戸隠ー魂が目覚めた場所。9年の修行を経て奈良へ。】
あの日の衝撃を、私は一生、忘れません。
九年前、八ヶ岳から車を走らせ、吸い込まれるように辿り着いたのが、長野戸隠でした。
ただ、どうしても「行かねばならない」と、魂の底から呼ばれるような感覚があったのです。
厳冬期の奥社参道。
得体の知れない求心力にひっぱられ雪深い静寂の中を、ひとり歩き続けました。
ブーツから雪がどんどん入ってきて寒さで足先の感覚がなくなっていきました。
しかし、そんなことよりも進まねばならないという衝動に突き動かされて。
そして──
辿り着いたのが九頭龍社でした。
「ここだ!!」
そう、はっきり感じました。
声なき声。厳冬期にも関わらず、つつまれる不思議な「あたたかさ」によって答えていただけた気がしました。
手を合わせた瞬間、寒さを忘れ、全身に静かな歓喜が満ち、魂のふるさとに帰ってきたような、言葉にならない安堵に包まれました。
次の瞬間、私は自然と口にしていました。
「この地に住ませてください!来たるべき時代に備えて鍛え上げたいのです」と。
信じられないほどに頻発するシンクロニシティに導かれ、人、場所、神仏との縁が結ばれ、気づけば、私はこの地に住んでいました。
戸隠。
1200年の修験道の歴史を持ち、霊山として、修行の地として、日本でも稀有な場所です。
「なぜ移住したのか?」と、幾度となく問われました。
心は一貫してこう応えました。
「修行です」
魂が発する声に従う生き方に自然とシフトしていったのです。
あれから九年。
魂のふるさとである戸隠での日々は、決して穏やかなものばかりではありませんでした。
幾度となく壁にぶつかり、これで終わり、詰んだ、と思ったことも。
何もかも壊れたかのように感じた孤独な夜もありました。
でも、それらすべてが、戸隠という圧倒的な力をもつ修験道の聖地がもたらしてくれた進化圧でした。
清も濁も、光も闇も、静も動も、全方向から襲いかかるように現れては、圧をかけ、錬磨し、清めてくれました。
戸隠は、魂を生まれ変わらせる場所だったのです。
そして今、新たな地へと向かうことになりました。
奈良県。
戸隠と深く関わる修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)が生まれた地です。
その奈良・葛城市(かつらぎし)にある當麻寺奥之院に、世界最大級80インチ(直径203cm)のギガゴングをお預かりいただいています。
重要文化財に指定された堂内に鎮座するその姿は、まるで初めからそこに在ったかのような、堂々たる佇まいです。
不可思議光明。
役行者の魂が、ゴングに宿り、導いたのかもしれない。
そして私たち夫婦がこれから住むのは、戦国武将・筒井順慶が築いた郡山城がランドマークとなる大和郡山市の古民家。
呉服屋を営んでいた方が守ってこられた場所です。
ここは、古代の都、平安京・平城京・藤原京・飛鳥京を南北につなぐレイラインに隣接し、かつて「中ツ道」と呼ばれた街道沿いに建っています。
東経は、135.5度。
戸隠も、奈良も、すべては人と人とのご縁で導かれてきました。
この旅路で出会い、支え、導いてくださった全ての皆さまに、心から感謝を申し上げます。
奈良への移行は5月上旬を予定しています。
それまで、その先も、恩に報いる発信を続けてまいりたいと思います。
最後に、あらためまして。
本当にありがとうございます。
この不可思議な光に導かれし日々に、心から──。
(九頭龍社の番地は「戸隠3690」です。奈良の新居の郵便番号は「639-1111」です。意図はしていません。偶然なのか──。)
THE KOKONOE・GIZA
ÆAHNX(アンク)ゴング奏者 水谷翔